一生懸命生きるのを辞めた日
——虚勢の努力を降ろして、素の生活に帰る
正直に言う。
もう、歯を食いしばるのをやめた。
いい人を演じるのも、強い自分を装うのも、もう降参。
「がんばる=取りつくろう」になってた僕の“努力”は、心をカラカラにしただけだった。
序:嘘ではないけど、嘘みたいな日々
詐欺をしたわけじゃない。だけど、小さな嘘はたくさんついた。
できない約束を強めの口調で言ったり、ちょっと盛った自分史を披露したり。
「小さい自分だと思われたくない」——その一心で。
そして毎晩やってくるのは、自己反省と罪悪感。
情けなさを隠すために、他人の足りないところを指さして、自分を守る。
言えば言うほど、胸の中の空洞は広がっていく。
あぁ、これが空回りってやつか。
第1章|僕の「一生懸命」は、取りつくろいだった
振り返ると、がんばっていたのは**“本当の自分”じゃなく“見せたい自分”**だった。
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小さな見栄を積み上げて、背伸びの塔を建てる
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しぼんだ心を、声量と大風呂敷で膨らませる
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うまくいかない日は、誰かの欠点を踏み台にする
一生懸命さの燃料が恐れだと、どれだけ走っても着かない。
ガソリンが不安だから、ただ焦げ臭いだけ。
第2章|“辞めた日”のこと
いつか見た「昔話を盛る人」。
一晩で50万遊んだとか、3人連れてホテルがどうとか、高級車で旅行とか。
そして奥さんとの馴れ初めまで“戦利品”みたいに語った。
聞きながら、ふいに自分と重なって顔が熱くなった。
——あ、これ、昔の僕だ。
笑えなかった。
その夜、静かに決めた。
取りつくろいの努力は、ここでやめる。
第3章|辞めたのは“がんばり”じゃなく“虚勢”
やめたこと/続けることを、紙に書いた。
やめたこと
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誇張・脚色・“盛り話”の癖
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「わかったフリ」「できるフリ」
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比較して勝とうとする会話
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飾りの約束(その場しのぎの“今度ね”)
続けること
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「わからない/できない」を言う勇気
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事実だけ話す、短い言葉
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小さな約束を守る(守れない約束はしない)
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休むことをサボらない
つまり、虚勢の努力をやめて、正直の練習を始めただけ。
第4章|虚勢の副作用と、静かな解毒
虚勢はじわじわ効く。副作用はこうだった。
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罪悪感 → 自己否定 → 他責化 → 孤独化
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睡眠浅い、肩と奥歯がやたら固い
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楽しいはずの場面で、なぜか演技が始まる
解毒は派手じゃなくていい。生活の最低線からやり直す。
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十分寝る/三食のうち二食だけ整える
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1日1回は太陽を見る/5分歩く
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事実しか書かない「今日の記録」を3行
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SNSに“証明”を出さない日を作る
小さな地味作業が、虚勢の毒を薄める。
第5章|“素のまま”で回すための7日プラン
Day 1:今日だけ事実だけ話す(感想は短く)
Day 2:「できない・わからない」を一度だけ口に出す
Day 3:SNSに成果を出さない代わりに、自分だけの記録を残す
Day 4:誰かの欠点に気づいたら、口に出さず深呼吸3回
Day 5:小さな約束をひとつ守る/守れない約束は断る
Day 6:家のどこかを10分だけ片づける(見える変化を作る)
Day 7:1週間を読み返して、続けたい1つだけ決める
“素でいる練習”は、生活の手入れから始まる。
第6章|見栄がうずいたら——応急処置メモ
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5分クッション:返信・投稿・反論は、5分後の自分に決裁
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言い換え:「すごいね」じゃなく「それ、どうやったの?」と聞く
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体から戻る:白湯→深呼吸→肩回し10回
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ユーモア一滴:「今日の僕の見栄、監督誰?」と心の中でツッコむ
第7章|“努力”の再定義
昔:削る努力(自分をすり減らして保つ)
これから:整える努力(正直・休息・続く仕組み)
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折れないのが強さじゃない。折れても戻れるのが強さ。
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好かれるより前に、自分にバレない生き方を選ぶ。
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大声より、静かな継続が効く。
第8章|読者へ:今日の一行だけ、一緒に
私は(小さくて現実的なこと)を、(いつ)までに、(こうなったら完了)にする。
例)「私は金曜18:00までに、できない案件を“できない”と伝える」
この一行が、虚勢を降ろす最初のレバーになる。
終:がんばらない日のほうが、ちゃんと生きられる
一生懸命を辞めた日から、世界は少し静かになった。
人に見せるための“いい話”は減ったけど、よく眠れる夜が増えた。
乾いていた心に、ゆっくりと水が入ってくる。
タイトルに反して、僕は今も生きている。
ただ、別の仕方で。
がんばらない方向に、ちゃんと、がんばらない。
それで十分、生活は前に進む。
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